API開発による中小企業のデジタル化

菅内閣の誕生で、行政サービスのデジタル化促進が叫ばれ、デジタル庁の設置でようやく国がITの本格活用を模索するようです。
片や民間企業においても、DX(デジタル・トランスフォーメーション)というワードが頻繁に出てくるようになりましたが、それは大手企業だけの話。
中小企業では未だにチーム間、部門間、パートナー間において、データの一元管理が上手く出来ていないのも事実で、これは単に技術力不足というよりは、権力争い、縄張り争いの弊害もあるようです。
加えて、中小企業ではデータのクラウド管理さえ出来ていないことから、コロナ禍においてテレワークが進んでいないことも判明しました。この格差が更に加速する恐れも十分考えられます。

人材リソースに限りがある中小企業こそITを上手く活用するべき、というのが持論ですが、国がお手本を見せてくれるでしょうか?
部門間を串刺しにしたデジタル化を実現する手法としては2つ。
1つはシステムの統合。これまで部門(国で言えば省庁、自治体)ごとにベンダーを抱えて個別にシステムを構築していたところを、共通のベンダー採用だったり基盤やアプリケーション、サービスの共通化を行うことです。ただし、データ構造等が既存のもと大きく変わる場合、移行作業に膨大なコストが掛かってしまいます。

もう1つの手法が、マスターデータを活用させるためのAPI開発に重きを置く仕組み作りです。
そのデータの管理元がマスターをしっかり管理し、それを利用したい他部門はAPIを介してマスターデータを利用するだけで、管理はしない仕組みです。
こうすることで、既存のデータを移行することなく、マスターからコピーして使っていた項目だけAPIを参照して利用すれば、データの管理が一元化でき、二重管理による不整合等は無くなっていきます。

よくある二重管理による悲惨な事例として、マスターデータは管理部門の下にあるが、それを使う営業部門がExcel等に複製して独自管理を始めてしまい、知らないうちにマスターデータが変更されているのに複製側はそのままで、整合性が取れなくなってしまうのです。
逆に複製データの方を勝手に編集してしまい、同じデータなのに部門間で共通することが出来なくなり、それに起因して顧客からの問い合わせに対して異なる回答をしてしまったりすることもあるようです。

また、バックオフィス業務で使用しているデータを、ECサイトやパートナーサイト等へ反映させる際、フォーマット違い等のから、改めて手作業でデータを反映させていることも多々あるようで、これが業務効率を大きく下げていることも事実です。
これはWeb運営によくある話ですが、修正〜反映の作業方法についても業務が属人化してしまい、引き継ぎも簡単に行えない状況を作り出しており、それが働き方改革を逆行する要因にもなっていたりします。
これは病院や検査機関からコロナ感染者の情報をFAXで受け取って、それを再入力している東京都の保健所と何ら変わりなのない、非合理的な仕組みの一例とも言えます。

API開発であればコストも最小限に抑えられ、既存のシステムの継続利用も可能で、運用コストも下げられます
そして、余計な業務に携わっていた貴重な人材リソースは、より人間ならではの業務に時間を割くことができ、それが業績のUPに繋がります。

IT業界ではAPIによるデータ間連携、マスター参照等は当たり前に検討される事案ですが、省庁や自治体、一般企業の社内や取引先間では、政治的な問題や利権争いに起因する非合理的な体制が維持されていることが、日本をIT後進国に追いやっているように思えます。
しかし、これを改善しない限り、1人当たり名目GDPが26位まで下がっている日本経済が改善することは無いと言えるでしょう。